調査報告:ベトナムでの日本語履修者の現状について

最近に限った事ではないですが、よくベトナム籍の方で日本語能力のある人材の採用に関してお問い合わせをいただきます。

 

 弊社では日本の大手企業や有名企業はもちろんですが、約80%は中小企業のベトナム籍の方の日本勤務幹部候補の採用をお手伝いさせていただいており、貿易大学や工科大学等のベトナム有名上位大学を卒業予定、もしくは卒業して間もないベトナム籍の方々を対象に、毎年2,000人以上、ハノイ、ホーチミン等で就職に関するインタビューを実施しております。

 

 インタビューを通じて、彼ら、彼女達の日本語を習得する意味や目的、現状についての一般的な見解やイメージとは、少々異なっていると実感することがあり、今回は改めてベトナムでの日本語履修者の実情についてご報告いたします。

 

 

 

(1)日本語履修者数は世界第8位

 

  ベトナムでは、最近の日本企業のベトナム進出の増加や、日本政府による海外開発援助(ODA)等の2国間の経済関係強化に伴い、日本語を履修するベトナム人は増加傾向にあります。

 

2012年国際交流基金の発表では、ベトナムは世界第8位、44,672人が大学や日本語学校等の教育機関で履修しており、人口10,000人中、5.3人が日本語能力を有していると発表しています。

 

 また2013年度より、ベトナム教育訓練省では、大学卒業の際には、日本語能力検定N2レベル(ビジネス通訳者レベル※)の能力を有する事が卒業条件となっています。

 

※日本語能力検定とは(国際交流基金ホームページ内、日本語能力試験認定の目安より抜粋)

・幅広い話題について書かかれた新聞や雑誌の記事・解説、平易な評論など、論旨が明快な文章を読んで文章の内容を理解することができる。

 

・一般的な話題に関する読み物を読んで、話の流れや表現、意図を理解することができる。

・日常的な場面に加えて幅広い場面で、自然に近いスピードの、まとまりのある会話やニュースを聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係を理解したり、要旨を把握したりすることができる。

 

 

 

(2)日本語能力を上げ、日本の伝統文化・企業文化を知る事が最大の関心事

 

日本語を履修しているベトナム人は「日本語能力をあげて日本語を使う仕事に就きたい」という思いが最も強いです。特に言語だけではなく、日本の伝統文化や企業文化に興味があり、日本人の働き方、つまり「真面目に一生懸命」「期限や時間を守る」「チームワーク」という文化にあこがれを感じています。

 

 また大学で日本語を専攻している方々は、相対的に語学に興味が強いため、英語能力も兼ね備えている場合が多く、日本語、英語、ベトナム語の最低3カ国語が使える「トリリンガル」である事が多いです。

 

 

(3)日本語を活用できる勤務先探しが難しい

 ベトナムに進出している日本企業は、1,542社(帝国データバンク調べ:2012年)。業種別では、製造業が47%と半数を占め、日本語履修者よりも機械や電気、ITといった技術者の雇用ニーズが高いため、日本語履修者の就職機会は相対的に少ない状況です。

 また、職種としても、秘書・総務・購買・調達等のスタッフ職が多く、日本人上司やメンバーとの会話以外では、職務中に日本語を活用する機会が非常に少ないのが現状です。

 ですので、最近は日本企業で製造業関係への就職を望まず、ホテル・レストラン等の日本語を常時活用する必要がる仕事に興味を持つ傾向も出ています。

 

 

(4)日本語をフル活用できる日本で働くことが夢

 

 日本語履修者にとって、ベトナムで日本語を活用できる機会が少ない現状で、ベトナム人日本語履修者の最大の目的は日本語をフル活用できる場所、つまり「日本で働く」事です。日本文化に触れ、様々な日本人との触れ合い、コミュニケーション能力をあげることが、最大の関心事です。

 

 しかしながら、日本で勤務できる機会や情報は、一部の有名上位大学出身者にしか届かないため、現実的には「夢」のままで終わることが多いのが現状です。

 

 

 

 

 以上、前述のように、日本語習得熱は年々高まっている一方、現実には、日本語履修者を積極的に採用する日本企業がまだまだ少なく、たとえ日本語能力があったとしても、なかなか門戸が狭く、弊社でも毎年30-40人程度しか、日本での就職を実現できていないという状況です。

 

 日本語能力のあるベトナム籍人材として、最初にお考えになるのが、留学生採用ですが、物理的に人数に限りがあるため、計画的な採用が難しいのが実情です。

 

 計画的な採用、もしくは多くの候補者から選考を望まれる場合は、ベトナム在住の日本語能力のある人材を対象にされる方が、より求める人物像にあった人材との出会う機会が多いのが実情だと思います。